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2012年11月 4日 (日)

本当に問われているのは「秋田県民の覚悟」?

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まさに「青天の霹靂」である。

突然の公立美術大学新設の不認可には関係者のみならず、秋田市民、県民の多くが深い憤りを感じ、マスメディアさえもその怒りの矛先を文科大臣に向けたような論調(いささか冷静さを書いているようにも見える)で、こんな所で、件の大臣を擁護でもしてしまったら、正直どこから石が飛んで来てきてもおかしくないような状況である。

そこで冷静に(そしてちょっと斜に構えて)、そこから聞こえて来るコメントや記事に耳を傾けてみると、そこには怒りとともに、ある共通したキーワードが見えてきます。それは...

「大学の数の増え過ぎと質の低下」であります。

誰もがみな、口を揃えたように「それは判っているたが、何もこのタイミングでそんな事をしなくても...」的な事を言っています。
要するに、私も含めて、多くの人々が「大学の質の低下」云々に薄々気が付いていながら、今の今まで何もして来なかったのです。

正直、そんな自分たちの態度を棚にあげて「通例通りじゃないとは何事か!?」と騒いでも、あんまり説得力が無い様な気もするし、むしろ大臣自身が音頭をとって、部下である官僚に日本地図を用意させ、そこに大学の位置をマーキングさせたというのが本当なら、田中眞紀子氏の方が、むしろ他の「通例通りの事しかしない大臣」よりもずっと立派だと思うのは、私だけでしょうか?

これが秋田県以外での話であったら、案外我々も「田中眞紀子、よくやったぞ!」と言っていたかもしれません。(八ッ場ダムの時のことや、「仕分け」の時の事を思い出して下さい。)
火の粉が降り掛かったのが、たまたま自分だった、という理由だけで怒ってはいませんか?

そもそも地域の大学って言うのは、それが何らかの理由があってそれが必要だったから建てられるのがスジだと思います。
秋田大学に鉱山学部なんて珍しい学部ができたのも、多くこの地に眠る地下資源を活かしたいからだったんじゃないでしょうか?
学校教育のレベルをあげたり、県民の健康を考えたから、教育学部や医学部が創設されたんじゃないんでしょうか?

美短だってもともとは、県内にある様々な伝統工芸の技や精神を後世に残し伝える為に必要だからできたんではないでしょうか?

必ずしも開校当時の精神に縛られる必要も無いとは思いますが、でも、大学がすでに多過ぎて問題となってきているこのタイミングで、あえて美短を4年制大学に格上げしてでも残して行こうという声を上げるのであれば、大学だけでなく、そう声を上げたみんなが何かをしなければならないのです。

よく考えてみて下さい。
4年制大学になるという事は今まで以上にスキルを身につけた大学生がたくさん排出されて来るという事です。

そんな彼らに卒業後に住みやすい環境を提供することができるのでしょうか?

学生のうちは良いけれど、いざ卒業してしまうと、手のひらを返すかの様に世間は冷たくなり「芸術家なんて訳の分からない人種なんかに部屋は貸せない」とか「部屋を汚すかもしれないから、保証金ぐらいよこせ」とか影で言われたり。

もちろん甘やかせば良いとは言いませんが、温かく見守るぐらいの事をしてくれるのでしょうか?

または皆さんは、卒業した彼らが個展をやったり、グループ展に参加したりした時に、足しげく通って応援する事はできますか?

そして彼らの作品がスゴくステキだったと思った時、ちょっとぐらい高くても購入する勇気はありますか?

大学ができるという事は、まさに、その地域に沢山の種がまかれるという事。
しかしいくら種をまいても水や肥料を与えなければ育たないのも事実。

「雑草のようにたくましく生きなければダメだ!」というのも正論かもしれませんが、それを言う前に、世の中の人がよく好き好んで使う「人は一人では生きて行けない!」という言葉の方も思い出してみて下さい。

大学まで建てて、芸術家、作家という人種をこれ以上増やすと言うならば、その地域に住む私たちも今までとは違う新たな覚悟で、彼らを迎えねばならないのではないでしょうか?
 



中野修一公式ウェブサイト/この世界のカケラを眺めながら

  http://nakanoshuichi.com/

Shuichi NAKANO official website / English edition

  http://nakanoshuichi.com/eng/top01.html


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コメント

ちいさな家 様
コメントありがとうございます。

この話の末路については、たぶんご存知だと思います。
終わってみれば、結局は元の通りに話が進んでいる訳ですが、この事件のおかげで期せずして、いろんなことが見えて来て、それはそれで興味深い事だと思っています。

例えば、来年から4年生大学になる事を知らなかった県民も少なからずいた事、そもそも秋田県にそんなものができる事さえ知らなかった人が全国に大勢いた事も。
またその事自体に賛成する人ばかりではなく、反対する人、よく思っていない人の言葉もアチコチから噴出して来たりして。

とにもかくにもできる事が決定したのですから、ここは温かく見守って行くしかありませんね。

投稿: 中野 | 2012年11月 8日 (木) 18時11分

いつも楽しく拝読しております。
今回のお話、全くだと思い、
感動を持って読ませて戴きました。
いつか先生の個展に伺い、
直接作品を拝見し、
出来ればお話が伺えればと思います。
日に日に寒くなりますが、
どうぞお体お大事に、
制作に励んで下さい。

投稿: ちいさな家 | 2012年11月 8日 (木) 15時00分

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