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2010年10月12日 (火)

2010個展を終えて、その1/その動物たち

10101202
作品を見られた方の感想に
「胸が苦しくなる、切なくなる。」というのがありました。

そして実を言うと、たまたま私が居ない時に来られた方で、作品を見ながら涙ぐんでいた方がおられたそうな。

どちらも、私がその場に直接いた訳でもないし、直接聞いた話でもないので、その事に対してコメントはできません。

でも、そんな話を耳にした時、ふと、自分がこのシリーズを描き始めた所の事を思い出してしまいました。

今回はそんなお話....

初めて描いたのは「大阪梅田から見たヒツジの群れ」で、大阪の街並の中にヒツジがボーッとしているという構図。
「芸術家」というよりは職人「絵描き」に近い自分にとって、描いている間は「このヒツジの毛並みが...」とか「このビルの影の色が...」とか、細部を見ている事が多い。

そしていざ、作品が完成して、全体を眺めてみると私がイメージしていた「どこか間の抜けたような牧歌的作品」というよりは、それとは似ても似つかない違和感みたいなものを強く感じたのです。

サル、キリン、ダチョウ、クエ...
そんな物をいくつ描いてみても、やっぱりその「異質感」みたいな感覚はついて回ります。

しかしながら、色々な所で作品を公開し、そこで「楽しいですね」「不思議ですね」「驚きですね」「面白いですね」なんて意見を多く聞くうちに、私自身もそんな違和感を「気のせいだった?」と勝手に思い込んだのか、いつしか忘れてしまい、それはいつしか「みんなが楽しんでくれるなら...(もちろん自分も)」という気持ちが先行し、とうとう「秋田シリーズ」なんて物にまで発展して、自分自身もちょっとだけ舞い上がったりもします。

そんな時、前述のような話を耳にして、再び、その昔の感情が突然、舞い戻ってきます。

そしてその違和感を落ち着けるべく、一つの解答を用意しようと考えを巡らせます。

この動物たちは、「自分の姿」ではないのか?

現状に満足できず「楽園」を捜している自分。
そのくせ「楽園なんかどこにもあるはずがない」とあきらめている自分。
そして自分以外の周囲に対して無関心な自分。


そう考えた時、別の気持ち悪さは残るけれども、最初に感じた違和感だけは、少し無くなるような気がします。

この解答が正しいのかどうかは判りません。
また答えが一つとも限りません。

だからこそ、作品を見て「楽しい気持ち」で帰られる方もあればで、「哀しい気持ち」で家路につかれる方もいるのでしょう。

もちろん私としては、どんな想いであれ、「想い」を抱いてもらえたという事は、ある意味成功だったのかもしれません。

ご来場頂き、誠にありがとうございます。



中野修一公式ウェブサイト/この世界のカケラを眺めながら
http://homepage.mac.com/sekainokakera/index.html


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