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2010年7月12日 (月)

卵テンペラ

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展覧会場なんかで、よく尋ねられる質問。

「テンペラってなんですか?」

絵っていうのは水彩だろうが油彩であろうがどんなモノでも、色の着いた粉(顔料)が画面にくっついてできている。
で、この顔料を画面に接着する為の接着剤(固着剤とかバインダーと呼ぶ)が水性と油性の成分を混ぜ合わせた接着剤を使用するタイプの絵の具を、総じて「テンペラ」と呼び、卵テンペラの他に、カゼインテンペラとか膠テンペラ、なんてのがあります。

で、私が使っているのは「卵テンペラ」というやつで、例えば朝の卵かけ御飯のカスが、黄色く口の端にこびりついてるなんてのが子どもの頃ありましたが、要するにその卵が固まってくっつく力を利用して、絵を描くってことです。

よくかき混ぜた卵に油(スタンドオイル)と樹脂溶液(ダンマル溶液)を適量まぜ、さらに撹拌すると出来上がるのが、このページの最初の写真の黄色い物体で、これが「卵テンペラ」
この作り方って「マヨネーズ」のそれと酷似してますが、もちろん食べる事はできません

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そこに顔料(今回はチタニウムホワイト)を加えて、よく練っていくと、こんな風に、卵の黄身の色味が消えて、ちゃんと白い色の卵テンペラ絵の具の完成です。

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さらにこの絵の具に水を加えて、描画しやすい硬さに調整していきます。
今回は薄くおつゆがけにしたいので、加える水の量はかなり多めです。たれないように気をつけながら、塗っていきます。

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左は絵の具を塗った「直後」で、右はその後、乾燥した時の写真です。
この絵の具の難しい所は、塗った直前と乾燥した時の色の変化が大きい事で、描いてる時は「この色味(または濃さ)でOK!」なんて思っていても、乾いてみると「アラララ..」なんて事が起こるので、その色味の変化も計算しながら、絵の具を調色しなきゃなりません。

本来はハッチングなどのもっと細かい描写に向いた画材で、水彩はもちろん油彩との親和力も高く、便利な材料なのですが、昔はダンマル樹脂溶液が手に入りにくかったり、撹拌が大変だったりと作るのが面倒なのと長期保存ができないとか、なんせ卵ですから、出来上がった作品にカビが生えるとか、虫がつくなんて事もあって、その後の保存が大変な画材でもあり。これもまた一長一短のある訳です。

私自身は「水性と油性がなじまずに、適度にはじき合う感じ」が好きで、時々使っています。

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もしもっと詳しい事が知りたい方がおりましたら、コメント欄に書き込んで下さい。



中野修一公式ウェブサイト/この世界のカケラを眺めながら
http://homepage.mac.com/sekainokakera/index.html

「世界ノカケラ 第二章」/このグループ展の情報はこちらから
http://www.sekainokakera.com


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制作日記」カテゴリの記事

コメント

こちらこそ、再びの質問にご返答いただきありがとうございます。

膠ですが、以前おかしいなと思いながら使ったものは、まさに!変なにおいがしました!そして、使うときには液体になっていました!冷蔵庫に保存してあったのに・・・。
使えなくなっていたんですね!!

冷蔵庫の中で、液体→ゼリー状→液体、という風に変化したり、
同じ条件で作ったはずのメディウムが分離したりしなかったり、
絵を描いているとミラクルなことがいっぱいだな、なんて日々驚いています。
(ほんとうに素人ですみません。)

一点にとらわれすぎて、現代の錬金術師のごとくにならないよう、
絵を楽しみながら学んでいきたいと思います!

お話を伺っていて、「画家」とは「画家という生き方」なのでしょうか。

画家に憧れて、「画家になる」ということが目標で到達点になっていましたが、
それでは、その後どうするの?というかんじですね。

「私は画家だ」といってしまったら「画家」になってしまう。
大切なのは、画家で居続けるために、絵とどう向き合っていくのか?

自分が自信を持って「画家です」いえるようになるよう、
いろいろなところへ行ったり、見たり、描いたり・・・
「画家で居続ける」自信ができた時、「画家です」と言いたいと思います。

やっぱり、私にはまだまだ「画家」になるというのは遠い話ですねcatface

投稿: あちゅこ | 2012年11月23日 (金) 23時14分

あちゅこ 様
再びのコメントありがとうございます。

そうですね。膠の使えるか使えないかの判断基準は、
1.匂い。腐ってるととんでもない腐敗臭がします。
2.冷蔵庫で保管しているにも関わらず、液体状になっている。
温度は変わっていないのにゼリー状から液状に変化している時は、まず使用をひかえた方が良いと思います。

自分の表現したい作品に合う質感などを追求し、その結果、人それぞれに油彩に行つく人がいたり、水彩やテンペラに行つく人もいて、あるいは彫刻や版画に辿り着く人もいます。
そんなこだわりはとても大切だと思いますが、中にはそこばかりにこだわり過ぎて、さしずめ現代の錬金術師かの如く、技法ばかりを追い求め、肝心の出来上がった絵が...という人もいます。特に古典技法をやっている人には多いです。
ようは、技法に縛られる事無く、ある程度自由に技法を使いこなす方が楽しいのかもしれません。

画家になる方法は、いたって簡単です。
例えばあなたが確定申告をする。アンケートに答える。懸賞に応募する。
そんな時、職業欄に「画家」と書けば、その日からあなたも「画家」になれます。

というのはちょっと極端な話ですが、でも画家になるのに、資格試験も無ければ、満たさなければならない用件なんか、何一つありません。

逆に言えば日展とか国展なんて団体展とかで会員になったり、「××記念公募展」や「◯◯大賞展」なんかに出品したりする事で画家になれるのかと言うとそんな事は無く、そんな人たちの多くも、他の仕事で収入を得ながら、絵を描いている人がほとんどで、そんな彼らはたぶん職業を聞かれれば、「学校の先生」「看護婦」「酪農家」という風に答えると思います。

じゃあ、絵を描いて売って生計を立てている人だけが「画家」か?というと必ずしもそうではなく、実際、前述のような方の中にも、スゴい絵を描いてる人はいっぱいいます。


いつも自分の絵の事を考えたり、人の作品を見て勉強したり、研究したりする。またはモチーフを捜してあちこちウロウロする。そして「今度はこんな風に描いてみよう」とか「ここはこうしてみよう」とか考えながら日々を生き、常に絵を描いていく事しか「画家になる」方法はないじゃないかと思います。

そして作品がたまったら、個展をしたり、誰かとグループ展をしてみても良いし、時々は公募展(コンクール)なんかに出してみても良いかもしれません。

そう言った活動を続ける中で周りに居る(自分以外の)人たちが、あなたの事を「画家」と認めるかもしれないし、認めないかもしれないし....
それもわかりません。

もちろんいくら描いても、ちっともお金にならない事だってあります。

だから結局、私自身、自分が画家でいるためには、例え副業をしながらでも「常に絵を描いて、絵の事を考えながら生きていく」という事しかないんじゃないのかな?と思っています。

ただそればかりだと「単なる自己満足の世界」に落ち入る可能性もありますが、そうならないために常に自己と自分の作品を、客観的に検証する必要があります。

そう言った意味では、誰だって比較的簡単に画家になれるとは思いますが、「画家で居続ける」のは結構大変かもしれませんよ。

あんまり参考にならないかな(汗)?!

投稿: 中野 | 2012年11月22日 (木) 17時22分

ありがとうございますhappy01

突然のコメント、質問をさせていただいたにもかかわらず、こんなにわかりやすくアドバイスをしていただき、ありがとうございます!

「水を入れる前の卵の撹拌の仕方」についてですが、卵のみでの撹拌は全くしておりませんでした。
水を入れてからの撹拌だけでして、これは新しい発見です!

卵黄の皮については、卵黄のみを手の上で転がしてから、卵黄に穴をあけて中身だけを取り出してつかっておりますので、皮は捨てています。

水を混ぜるのは、直前がよろしいのですね!
作り置きすることばかりに気を取られていました。

膠についてですが、以前冷蔵庫に保存してあったものを金箔貼りに使ったところ、金箔が全くつかないことがありました、「あれ?以前はちゃんと貼れたのに、おかしいな」と思ったことがあります。おそらくその膠は古くなっていたものだったのだと、お話を聞いて納得です。

絵の専門的なことは全くわからないので、初歩的な質問だったのかもしれませんが、ご丁寧にありがとうございます。

中野さんの「ルール無用」「画面の上に絵具がくっついていれば良い!」ということばに、はっとさせられました!メディウムとして画面にくっつけてくれればいいんですよね!
分離する、しない・・・にこだわりすぎて、何日もそればかり考え、なかなか絵を描き始められず困っておりました。

卵の段階での撹拌、直前に水を混ぜる、に気をつけて、さっそく絵を描き始めようと思います!sun

あ、あのそこで、もうひとつ中野さんに伺いたいのですが、
私は、美大も美術の専門学校も出ていない素人です。
昨年、絵の市民講座に参加したのがきっかけで、趣味でテンペラの絵を描き始めておりますが、絵が上手という訳でもありません。
ただ、幼い頃学校で描いた絵が何度か(地元の公民館の展覧会などで)賞をいただいたり、評価していただいたことがあり、それが素直に嬉しかった記憶が強く残っています。
そのためか以前よりひそかに「将来、画家になりたい」という夢があります。
この夢が叶うのは今すぐではなく、おばあちゃんになってからでもかまいません。
すごく画家さんにあこがれています。

そこで、
・こんな私でも画家になれる可能性はありますか?
・どうすれば画家になれますか?
・画家になるために、なにか資格や条件はありますか?

ぜひ、中野さんのアドバイス、ご意見をいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。


投稿: あちゅこ | 2012年11月22日 (木) 15時45分

あちゅこ 様
コメントありがとうございます。

私自身、いつも卵にスタンドオイルとダンマル樹脂溶液を混ぜた物を使っていて、卵オンリーのメデュウムは使用した事が無いので、はっきりと原因はわかりませんが、お答えできる範囲で書いていきます。

まず「水と卵の分離」に関して言えば、水を入れる前の卵の撹拌の仕方に違いがありませんか?
油入りのテンペラを作る際も、最初の段階で卵のみを撹拌するのですが、これが足りないと油を入れた時にも混ざり具合が悪く、すぐ卵と油が分離してしまいます。
まずは卵のみの段階の撹拌をしっかりやってみてください。
それともう一つ卵黄の皮はどうしてます?

それから水を混ぜるのはなるべく使用する直前が良いと思います。
一般的にはほとんどの食材が水を混ぜられる事で腐りが早くなる性質があるようで、それは卵も例外ではありません。確かに酢はある程度腐敗を遅くする性質はあるようですが、それにも限界がるので、「防腐剤としては100%ではない」と思っていた方が無難です。

あと本来分離しないべきものが「分離する」ということは「メディウムとして何らかの問題がある」という事で、「問題がある物は使わない方が良い」という三段論法みたいな話です。実際日数が経ってから分離するのであれば、「卵の腐敗」と何らかの因果関係がある事が予想され、腐敗した卵の固着力が確かかどうかは疑問視される所があるし、だいたい臭いし、使いづらくないですか?
ちょっと物は違いますが、例えば膠なんかも腐ると固着力が無くなります。

ただぶっちゃけた話をすれば、私は少々分離しても、腐敗臭がする時でも平気で使用します。その理由の一つはそうして使ってみても、問題視するほど固着力が落ちたような感触が無い(問題なく画面にくっ付いている)、という点と、もう一つは私の制作行程の場合「最終的には油彩で仕上げる」と言う基本があり(ただしそうじゃ無い場合もある)、テンペラの不具合も、最終的には油彩でカバーしてしまおう、という考えあるからだと思います。

私自身、細かく研究をした訳ではなく、テンペラに関しても20年近い経験則でのみ使用している所がたぶんにあり、ひょっとしたらその道のエキスパートに言わせると「オイ、オイ」という所も沢山あるかもしれません。
実際、私の場合、油彩画の上に膠彩を施したり、墨汁で描いたりと「ルール無用」でやってる部分が沢山あります。

要するに「画面の上に絵具がくっついていれば良い!」ということで、自分の表現したい世界と技法の限界に折り合いを付けながら、自己責任で毎日制作しています。

先程も書きましたが、あくまでも経験による知識であり、科学的な根拠や裏付けはほとんどありませんが、参考になれば幸いです。

投稿: 中野 | 2012年11月21日 (水) 18時29分

「卵 テンペラ」で検索をしていたら、ここへたどり着きました。

ひとつお伺いしたく、コメントを書かせていただきます。
現在、趣味ですがテンペラ(エッグ)を描いております。
卵黄、を使ったメディウムを作るところで行き詰ってしまっています。
メディウム「卵黄:水」を「1:9」→「1:6」→「1:3」→「1:1」
という風に、色を重ねていくときにだんだん濃くしていって描いております。
その都度、「1:9」とか「1:6」とかのメディウムを作っております。

その、メディウムなのですが、あるときは作った後何日経っても分離せず、あるときは数十分で分離してしまう、そんなものができてしまいます。
下に黄色い卵黄?上に水?というように分離してしまいます。

新鮮な卵を用意して、卵黄だけ取り出し、それに水を入れ、食酢(数滴)入れて混ぜる。
このように作っています。

そこで、画家さんのご意見をいただきたいのですが、
・なぜ、分離してしまうのでしょうか?
・分離するときと、しない時があるのはなぜでしょうか。
・分離したメディウムは使わない方がいいというのはなぜでしょうか。

よろしくおねがいいたします。

投稿: あちゅこ | 2012年11月21日 (水) 17時36分

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