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2010年6月18日 (金)

西脇市の個展/作品解説「凍える岬」

10061801
凍える岬/F12号(61×50cm)/2009年作/192,000円

市販のキャンバスに油彩で描いた作品。

これは10年以上前、当時住んでいた稚内から最北端の宗谷岬に向かって車を走らせていた時に見つけた風景。
この辺りはこの日に限らず、冬の季節はいつもこんな感じの天気が続き、例え晴れた日でも、海から吹く強く冷たい潮風が止むことはほとんどありません。

不思議な物で、それぐらい風が強いと逆に降った雪も風に飛ばされてしまい、降雪量の割りには、積雪が少なかったりします。

そんな風景を描いた作品ですが、これを展示すると必ず話題になるのがこの道路脇に立っている紅白で描かれた下向きの矢印標識の事。
ちょっと調べてみましたが正式名称などはわかりませんでしたが、北海道辺りでは当たり前にどこにでもある標識で、これは積雪や吹雪で、見えにくくなった道路の路肩の位置を示すのが役目です。
風が強く、地吹雪が吹き荒れる中を実際走ってみると、夜はもちろん例え昼間であっても自分が道路のどの辺りを走っているかわからなくなることがあり、そんな時に上を見上げて、この矢印を確認しながら自分の走行位置を修正していきます。

素人考えだと「わざわざ回りくどいことしなくても、道路脇に3mぐらいの紅白のポールを立てとけば良いんじゃない?」と思いますし、実際秋田県などはそうしていますが、これが落とし穴で、そんな物が道路のすぐ脇に立っていると、除雪車が除雪の際によせた雪と一緒になぎ倒す可能性があったりで、そうなるといざと言う時全然役に立たない訳で、その結果、こういった形になったんじゃないかと推察する次第であります。

絵の説明からはずいぶん離れたところに来てしまったようなので、話を元に戻しますが、こんな風に海岸沿いを走っていると、自分が時々、暗い闇の中に吸い込まれていくんじゃないか、と言う錯覚に捕われそうになります。
しかし個人的には、それを「怖い」と思う感覚はほとんどなく、むしろ「そんな中に迷い込んでみたら、どんなところへ行けるのだろうか?」というちょっとしたワクワク感みたいな感情がわいてきます。

「それってちょっとおかしくない?」
と言われれば、確かにそうなのかもしれませんが、子どもの頃から、雪が降るのを待ち望み、また一度降り始めれば、そんな光景をただ黙って眺めているのが好きだった自分にとっては、どんなに寒くても、どんなに冷たくても、それは「待ちに待った風景」への入口の一つであり、これはその入口へと続く「道」なのかも知れません。



中野修一公式ウェブサイト/この世界のカケラを眺めながら
http://homepage.mac.com/sekainokakera/index.html

「世界ノカケラ 第二章」/このグループ展の情報はこちらから
http://www.sekainokakera.com


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