「世界ノカケラ」を眺めるー総括、その2
今回は会場に来られた方の「感想」について。
その前に、会期中にあったこんなエピソードを紹介。
午前中の人の少ない時に会場に来られた年配のお客さま。ゆっくりと一周。そして二周目に入った頃に首を傾げる様な仕草で、その視線にも何となく戸惑いの様なものが見て取れます。
そして三周ほどした後、私たちの方へやってきて、こうおっしゃいました。
「どの作品が写真ですか?」
実を言えば、同じ様な事を質問された方が多くありました。
「これ写真なの?」
「写真みたいな絵だね。」
「絵みたいな写真だなぁ。」
今回の展覧会で、最も多かったのがこんな感想でした。
自分の様な絵を描いていると、「写真みたいな絵」と言われる事はよくあるので、それほど不思議な事ではありません。
ただ、並べたときの雰囲気を壊さないようにと、肉厚の油彩額を使わず、全ての作品を細身の仮縁でまとめてみたのは確かですが。
逆に「絵みたいな写真」という感想は正直、ちょっと驚きでした。
と、同時にそんな予感も少しは感じていました。
田村さんの作品は白黒写真なのですが、普段見慣れない、テクスチャがあり光沢にもバラツキのある特別な用紙にプリントしている事と、その紙の特性によって最暗部の階調がつぶれてしまい、そのつぶれ具合が「見え過ぎ、写り過ぎ」を押さえる結果となり、それも絵画っぽく見えた一因なのかもしれません。
加えて、今回の写真そのものが色々な意味で「絵画的」であり、本人もひょっとしたらその事を、少し意識して撮ったんじゃないかと思います。
実際の展示作業の際も、写真と絵画の境界線をはっきりと見せる事なく、全体として統一感のある会場作りを心がけましたし、思い返してみれば、私自身もそんな事を頭の片隅で何となく意識しながら、作品を作っていたような気がします。
「できるだけ違和感のないように両者の作品を並べよう」という当初から念頭においていた目標は達成されたと思います。
もちろん、「俺なら写真とは並べないけどな。」なんて感想を寄せて行く方もおりましたし、そう考えると、私たちの気が付かないデメリットもあったのかもしれませんが、それ自体は今後の活動の中で発見、解消して行けば良いのではないかと思っています。
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