のんびりできる場所/酒田市術館

上の写真は、夕日に輝く金閣寺・・・じゃなくて、山形県は酒田市にある土門拳記念館。
この建物が出来て間もなくの頃、一度行っただけの美術館でしたが、昨年久しぶりに訪問して、この施設にすっかり惚れ込んでしまいました。
ここのいい所は館内のあちこちにあるイスとその置き場所なんです。ずっと座り込んで作品を眺められるものはもちろん、目の前に広がる池をぼんやりと眺めながら、そこに遊びにくる渡り鳥を観察したり、そのまわりの桜並木を鑑賞できたり・・・。
一方その外側に出て、その池をまわりを散策したり、眼下に流れる最上川が夕日に染まる光景に見とれたりなど、ちょっと町外れにあるので、散歩がてらというロケーションではないのかもしれませんが、ちょっと車で来てのんびりしたり、犬を連れて散歩に来たりできる素敵な場所でした。
これはもちろんよそ者である私の感想ですから、実際、地域住民がどう思っているのかは判りませんが。

そしてこちらがそのすぐ側にある酒田市美術館。
一見、どこにでもありそうな地方美術館なんですが、そのなにげない佇まいに秘められた工夫に驚いてしまいました。

入口を入るとそこには縦長のエントランスがあり、その一方がガラス張りになっていて、そこには広場があり、さらにその奥には酒田の町並が見えます。
この広場を囲うように右手に喫茶、左手に企画展示室と常設展示室がコの字型に配されています。その企画展示室自体は、それほど大きくもなくこじんまりとしていて、それほど目立った特徴もないのですが、その先の、わずかに下るように廊下を歩いてたどり着く常設展示室の方が面白いんです。
展示されている作品自体には好みもあるので何とも言えませんが、その辺りは笹薮と木立に囲われていて、雑木林の中に迷い込んで来たような不思議な感覚にとらわれます。さらにその奥のガラス張りの休憩室なんですが、立っているときは笹薮の向こうに酒田の街並が見え、一方、イスに腰掛けると、薮と木立の間に空が見えるだけとなり、そこでぼんやりしていると、森の中で瞑想しているような気分になってくるんです。
ちょっと気分転換にのんびりとできる場所。
今回絵本原画展を観に来たのですが、春休みということもあり、月曜日にも関わらず、休まずに営業されているのです。こんな細かい配慮もちょっとうれしいです。
私の住む秋田県でも、美術館の移転計画が進行中です。でも騒がれているのは、「どこに移転するか?」とか「誰に設計を頼むか?」なんてことばかり。
近所の某近代美術館を見るに付け、
「窓から景色を見るなら高い方が良い」的な発想で、建物を高くし、「大は小を兼ねる」が如く無闇に広く、その実中身はスカスカ。企画力も集客力もない「箱」がまた増えるのかと思うと、頭が痛いです。
本来、美術館の問われるべきものは「中身」であります。作品もなければ、人材も無く、ましてやその為の資金も思案もないのであれば、せめて、市民が憩える場所としての機能だけでも充実させて欲しいと思います。
本当に、前述の2つの美術館が存在するというだけで、ちょっと移住してみたくなる、そんな酒田市にある素敵な場所でした。
http://homepage.mac.com/sekainokakera/index.html
http://www.nishiwaki-cs.or.jp/okanoyama-museum/thumbhole/
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