初冠雪の翌日に/鳥海山登山、その2



ここまでもかなりの登りでしたが、ここからもさらに続きます。見通しが良い分迷う心配はなさそうですが、疲労感は余計に募ります。振り返れば雲海の彼方に、何やら背の高山の姿もチラホラ。「あれは岩手山かな?」なんて勝手な事を想像しながら、歩みを進めます。
ここからは鎖場なのですが、それが無ければ登れないほど傾斜がきつい訳ではありませんが、万が一落ち始めたら、止まる事無く転がって行きそうです。ちなみにこの辺りから石畳のように登山道を整備しているのですが、これって下りの疲れた足には相当きついんですよね。



途中、分岐点の標識を見つけるも着氷によって、判別できません。
(9時55分)
ふと周りを見わたしてみると、あちこちの岩に何か不思議な模様。
これが「エビのしっぽ!」
噂には聞いた事ありましたが、実物を見たのはこれが初めて。あまりの珍しさに必死で写真を撮り続けていましたが、ふと目に入った崖の裏側にまるでクジャクか尾長鶏のしっぽみたいな、巨大な「エビのしっぽ」を見つけてしまいました。

あれ、もしかしてここは・・・
どうやら頂上に着いたようです。(10時03分)

正確にはここから目の前に見える上の写真の「新山」が一番標高が高いのですが、私が着いたのはそこよりも7メートルほど低い「七高山」という山でした。

これが七高山の頂上です。写っているのは私ですが、寒そうな周囲の風景に反し、前述通り、着ていたのは長袖Tシャツと長袖の前ボタンのシャツ、そしてジャージの3枚です。ちなみにジャージはここに到着してから羽織ったもので、登っている最中は着てませんでした。

先ほどの新山の麓には大物忌神社か御室小屋らしき建物も見えます。この手前辺りを一度下って、それからまた登ると新山に行く事ができます。しばらく迷いましたが、せっかくここまで来たんだし、天気もよくなって来たし、ということで行く事にしました。



七高山頂上から尾根づたいに3分ほど行くと左上のような大岩があって、そこの側に下りのルートを示す案内が立っていて、よく見ると鎖も見えます。その急坂を下り(上の写真右は今下って来た道です。)新山目指して登り始めますが、ルートが非常に分かりにくいんです。(10時14分)
かろうじて残っている踏み跡を頼りに登って行くと、大きな岩がただ積み重なっているような場所に行き当たります。


たぶんこの辺りが頂上?という所の手前まで来て、困りました。
(10時34分)
ピークらしい岩の固まりがあちこちに点在しています。どこを目指したものやら、と考えていたら、二つのピークにところにそれぞれ男の人の姿があり、何か大声で話している様子。良く聞いてみると・・・。
「おーい、そっちに目印みたいな物あるかぁー?」
「無いみたいだけど・・・」
「じゃ、やっぱりこっちが頂上かな?」
どうやらこの二人、私が辿って来た踏み跡の主のようなのですが、彼らももいざ上がってみたは良いけれど、どこがピークか分からない様子。例え印があったとしてもこの雪では分からないかもしれません。
とりあえず前進しようかとも思いましたが、何か急に足下もおぼつかなくなったので、引き返す事にしました。

何でもこの新山との谷間のどこかには噴火口もあったそうな(?)。その谷間に立ち、七高山の方を眺めると、いつしか空は晴れ渡り、白い雪山とすばらしいコントラストをなしてそびえています。
その美しさに息をのみつつも、もう一度朝子に戻らなければならないのかと思うと、先ほど飲んだ息が、溜息となって戻って来ます。

再び、七高山の頂上に戻ったのは11時頃。「行きはよいよい、帰りは怖い」じゃないけれど、戻る方が精神的にも肉体的も大変でした。
そこで昼ご飯を食べ、後ろ髪を引かれつつも下山開始!(11時25分)
元来た道をひたすら戻るだけですが、すでに足は限界を超え、舎利坂を降りきった辺りで、足が上がらなくなって来ます。筋肉痛もピークとなり、足の筋肉がつり始め、歩き方を帰ると、また別の筋肉が突っ張る、といった感じです。それも麻痺して来ると、力は入らなくなり、急坂などは手とポールを使い、まさに「上半身で下山」するような格好になりました。
一度途中で休んでみましたが、何の解決にもならず、帰って足がこわばるようで、ゆっくりでも良いから歩き続けた方が無難,という結論にたどり着きました。

来るときはずっと下に眺めていた雲海でしたが、帰りは「氷の薬師」辺りからすでにもやに覆われてしまい、視界は効くものの、頂上の様子も下界の様子も伺い知る事はできません。
ボロボロになった足を引きずりながらようやく「祓川ヒュッテ」に到着。
(13時39分)
無事、下山する事ができました。
たぶん今年は最初で最後の鳥海山登山。疲労はピークに達していましたが、充実感はそれ以上であり、また自分の知らない雪景色を一つ手に入れられた達成感は何ものにも代え難いものでした。
最後に一言。
ここにある時間などのデータは、あくまでも個人的な記録ですので、参考程度ならともかく、鵜呑みにしないようにお願いします。
また山自体の状況なども、これはあくまでも2008年9月29日のデータということをご理解の上、それを似たような他の日に当てはめて考えたり計画を立てたりしないようにお願いします。
ここまで長のお付き合い、誠にありがとうございます。
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コメント
「絶品Club」レオン 様
はじめまして。 この度はコメント、ありがとうございます。
山行きはいつも「素人、思いつき、一人旅」という具合で、
「心配はかけても迷惑はかけない」を心情にしておりましたが、今回はあまりの筋肉疲労で一週間弱まともに歩く事さえできず、家族にはしっかり迷惑をかけてしまいました。
しかしそれと引き換えにしても、このような形で、手軽に雪山の雰囲気を味わえたのは本当に良い経験でした。まともにアタックしたらこんな軽装では済まないのでしょうから。
そちら様のブログも覗かせて頂きました。これからも時々拝見したいと思います。それではまた。
投稿: 中野修一 | 2008年10月13日 (月) 04時06分
はじめまして
山の交差点で9/14の鳥海山山行を投稿した「絶品Club」レオンと申します
初冠雪翌日の海老のシッポ! 「休んでみましたが、何の解決にもならず」・・・あっはっは
前、後編 楽しく拝見させて頂きました
次回は、康新道から回り込むルートの染まり具合を見ながら登ろうと思っていましたが叶いそうもありません、涙・・
投稿: レオン | 2008年10月12日 (日) 20時13分